食料品の消費税率を2年間に限って8%から1%へ引き下げる消費税減税法案が、2026年11月6日の衆議院本会議で可決されました。法案が成立すれば、2027年4月1日から2029年3月31日まで、現在の軽減税率が適用されている飲食料品の税率が1%になります。

一方、中・低所得の就業者に支給する「就業者負担軽減支援金」の対象や金額、減税に必要な財源には不明確な部分が残っています。野党各党が衆議院で反対したほか、自民党内からも異論が出ました。今後の焦点は、与党が過半数を持たない参議院で法案を成立させられるかどうかです。

消費税減税法案が11月6日に衆議院を通過

消費税減税関連法案は11月6日午前、衆議院財務金融委員会で与党の賛成多数により可決されました。同日午後の衆議院本会議でも、自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参議院へ送付されました。

政府が提出した法案の正式名称は「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」です。[衆議院が公開している法案](https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22209001.htm)では、物価上昇を踏まえて飲食料品の税率を2年間引き下げるとともに、中・低所得の就業者を対象とする支援金制度を創設すると定めています。

衆議院では30時間を超える審議が行われましたが、公明党と民主改革の会による会派「中道」、国民民主党、参政党、チームみらいなど、野党各党は反対しました。野党側は減税そのものだけでなく、財源や支援金の詳細が固まっていない状態で採決することを問題視しています。

自民党内でも足並みは完全にはそろいませんでした。石破茂前首相や小渕優子元選挙対策委員長らは採決前に議場を退席しました。小渕氏は財源を含む懸念が審議で払拭されなかったとの認識を示しています。船田元衆議院議員も、財源が明確に示されていないことなどを理由に採決を棄権しました。

食料品の消費税1%はいつから始まるのか

法案が成立した場合、食料品の消費税率は2027年4月1日から1%へ引き下げられます。実施期間は2029年3月31日までの2年間です。2029年4月1日には、原則として現在の8%へ戻す制度設計になっています。

対象となるのは、現在も軽減税率8%が適用されている飲食料品です。スーパーやコンビニエンスストアなどで購入する一般的な食品、飲料、持ち帰り商品などが中心となります。酒類や店内での外食は現行制度でも軽減税率の対象外であり、今回の1%への引き下げにも原則として含まれません。

例えば、税抜き価格が1万円の対象食品について単純計算すると、現在は800円の消費税がかかります。税率が1%になれば税額は100円となり、差額は700円です。家計が毎月5万円を対象となる食料品に支出している場合、税率差だけを計算すれば月3,500円、年間4万2,000円の負担軽減になります。

ただし、減税分がそのまま販売価格の低下につながるとは限りません。原材料費、物流費、人件費などが上昇すれば、事業者が本体価格を改定する可能性があるためです。消費者が受ける実際の効果は、2027年春の物価や価格転嫁の状況にも左右されます。

なぜ0%ではなく1%なのか

政府は、税率を完全な0%にするのではなく1%まで引き下げる理由として、レジや会計システムの改修に必要な時間を挙げています。税率0%では、課税取引から非課税に近い取引へ変更するため、仕入税額控除やインボイス制度を含む広範なシステム対応が必要になります。

1%であれば課税取引の枠組みを維持でき、0%より短期間で導入できるというのが政府の説明です。政府・与党は、2027年4月の実施に間に合わせるため、1%という税率を採用しました。

一方、消費者全員にとって税率が実際にゼロになるわけではありません。政府が「実質ゼロ」と説明しているのは、食料品に残る1%相当分を、中・低所得の就業者に支援金として給付する仕組みを組み合わせるためです。支援金の対象外となる人は1%を負担するため、「実質ゼロ」という表現と制度の実態を分けて見る必要があります。

就業者負担軽減支援金とは

法案には、食料品の消費税減税と並ぶ柱として「就業者負担軽減支援金」の創設が盛り込まれました。税金や社会保険料を負担している中・低所得の就業者に対し、所得や扶養する子どもの数などに応じた支援金を支給する制度です。

政府は支給対象について、現役で働く人の少なくとも3割程度以上とする方向で検討しています。これまで示された参考値では約2,000万人が想定されていますが、具体的な所得上限や支給額は法案に直接書き込まれず、成立後に政令で定める仕組みになっています。

支援金の認定と支給は市町村が担当します。受給希望者は原則として住所地の市町村長による認定を受けますが、所得情報などから受給資格と金額が明らかで、公金受取口座を登録している場合には、市町村長が職権で認定できる規定も設けられています。

支援金は2027年度から先行的に導入され、食料品の税率が8%へ戻る2029年度から本格導入される計画です。[財務省の説明](https://www.mof.go.jp/public_relations/conference/my20261009.html)によると、政府は消費税減税による全所得層への支援と、所得に応じた給付を組み合わせることで、負担軽減の迅速性と公平性を両立させるとしています。

支援金の対象と金額が争点に

野党が特に問題視しているのが、支援金の所得上限や支給額が採決時点で確定していない点です。扶養する子どもへの加算や、病気や障害などで就業が難しい人への対応についても、今後の検討に委ねられた部分があります。

公明党は、約2,000万人という対象者数では少ないとして、より幅広い勤労者を支援するよう要求しています。国民民主党は、2029年に食料品の税率を8%へ戻した際、支援金を受けられない中間所得層の負担が急増する可能性を指摘しています。

税率が1%から8%へ戻れば、対象食品の税込み価格には7ポイント分の上昇圧力がかかります。2029年時点で物価高が収まっていなければ、家計が減税終了を大幅な負担増と感じる可能性があります。2年間の時限措置を予定通り終了するのか、経済状況に応じて見直す余地を持たせるのかも、参議院審議の重要な論点です。

2年間で約10兆円の財源をどう確保するのか

食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げると、国と地方の税収は大きく減少します。政府・与党は、2年間の減収規模を約10兆円と見込んでいます。

政府は赤字国債に頼らず、歳出や租税特別措置の見直しなどで財源を確保する方針です。行政事業の削減を進める「日本版DOGE」も財源確保策の一つに挙げていますが、どの事業を見直し、いくら捻出するのかという具体的な内訳は示されていません。

消費税は社会保障の安定財源として位置付けられ、地方自治体にも配分されています。減収分を十分に補えなければ、社会保障サービスや地方財政へ影響が及ぶ可能性があります。そのため、単に「赤字国債を発行しない」とするだけでなく、減税期間中の年度ごとの財源と地方への補填方法を明らかにする必要があります。

与党内から棄権や退席が出た背景にも、財政規律への懸念があります。参議院では、減税による家計支援の効果だけでなく、恒久的な歳出削減が可能なのか、減税終了後に別の増税や負担増へつながらないかが問われます。

参議院では与党だけで可決できない

法案の審議は来週から参議院へ移る予定です。参議院では自民党と日本維新の会の与党が過半数を確保していないため、法案をそのまま成立させるには野党の協力が必要です。

審議を担当する特別委員会も与党19人、野党20人の構成で、与党だけでは可決できません。日本保守党は政府案への賛成方針を示していますが、それを加えても本会議での過半数には2議席足りないと報じられています。

与党が協力を期待しているのは、公明党や国民民主党です。国民民主党の玉木雄一郎代表は、法案の内容が修正されれば参議院で判断を変える可能性があるとの考えを示しました。公明党も、政府が支援対象や給付額を修正することを求めています。

参議院で修正案が可決された場合、法案は衆議院へ戻されます。衆参で同じ条文を可決して初めて成立するため、修正の内容と衆議院側の対応も重要になります。

家計への効果と制度の具体化を見極める局面に

消費税減税法案が成立すれば、2027年4月から日常的に購入する食料品の税率が8%から1%へ下がります。物価高に直面する幅広い世帯へ直接効果が及ぶ一方、制度は2年間限定で、2029年には8%へ戻る予定です。

今後確認すべきポイントは、支援金を受け取れる所得の範囲、世帯ごとの支給額、子どもへの加算、約10兆円とされる財源の内訳、減税終了時の中間所得層への対策です。小売店や飲食料品メーカーにとっては、レジ、会計、請求書、価格表示の変更に必要な準備期間も課題になります。

衆議院通過は制度実施の決定ではなく、成立へ向けた一つの段階です。少数与党の参議院で野党の修正要求がどこまで反映されるかによって、家計が受ける支援の範囲や財政負担は変わります。食料品の消費税1%が予定通り2027年4月に始まるかは、これからの参議院審議と与野党協議にかかっています。