東京都は10月29日、第63回「UPGRADE with TOKYO」に参加するスタートアップの募集を始めました。テーマは、障害の有無にかかわらず芸術文化活動に親しむきっかけをつくることです。2027年度に都内で開催される全国障害者芸術・文化祭へ向け、体験や交流につながる提案を求めています。応募期限は11月24日18時の予定です。

UPGRADE with TOKYOは、スタートアップの製品やサービスを都政課題の解決に結び付けるピッチイベントです。行政と民間の接点をつくり、製品などの提案や交流を行う仕組みとして2019年12月から開催されています。今回は福祉局の課題を題材に、文化への参加の入口を広げる企画を募集します。

審査で優勝した事業者は、事業の協働などに向け、優先的に交渉を進めることができます。優勝すれば直ちに契約が成立する、一定額の受注が保証されるという意味ではありません。応募企業には、提案の魅力だけでなく、その後に条件を具体化する協議があることを理解する必要があります。

作品を知らせるだけでなく、参加する機会をつくる

東京都が課題として挙げるのは、従来のSNSなどによる広報だけでは届きにくい人への接点です。障害者芸術とこれまで接する機会がなかった都民や、芸術活動に親しむ機会が少なかった障害のある人、福祉施設などへ、魅力を体験し共有できる仕組みを求めています。

求められているのは、既に関心のある人へ告知するだけの提案ではありません。作品や創作活動を入口に、参加や交流へ進む導線を考えることが論点になります。例えば、見るだけだった人が自分も作る体験に参加できるか、施設の活動の中で無理なく取り組めるかといった、使われる場面の具体化が重要です。

期待するサービスの例として、多様な人々の共創を生む仕組み、ワークショップや共創イベント、AR・VR・XRを活用した体験、オンライン鑑賞や作品応募につながる基盤、アートを巡る参加型企画などが挙がっています。これらは例示であり、特定の技術を使わなければ応募できないという案内ではありません。

デジタル技術を使う場合も、端末を持っているか、操作できるか、表示や音声の条件が合うかなど、参加の前提を確かめる必要があります。体験が新しいことと、幅広い人が参加できることは同じではありません。技術の名称より、誰がどこで何を楽しめるのかを説明できるかが実装を考える視点になります。

12月18日に5社のピッチを予定

本番のイベントは12月18日14時から16時45分まで、新宿住友ビル25階のTOKYO UPGRADE SQUAREで開催する予定です。スタートアップ5社のピッチ、結果発表と審査委員の講評、フォトセッションなどが計画されています。状況によりオンライン開催になる可能性も示されています。

書類審査を通過した事業者を対象に、12月9日にオンラインのプレピッチを予定しています。応募後に本番だけ参加すればよいとは限らず、前段階の日程も確保する必要があります。発表準備の人員、既存事業の予定、登壇する担当者を考えたうえで応募を検討することになります。

募集期間は10月29日から11月24日18時までの予定です。応募方法の詳細は公式ホームページで確認するよう案内されています。企画書の作成だけでなく、必要事項や提出形式を確認し、送信の完了まで含めて予定を組むことが大切です。期限当日の夜まで受け付けると誤解しないよう注意が必要です。

一般観覧の申込も公式ページで案内し、定員は24人とされています。イベントの様子は産業労働局チャンネルでライブ配信する予定です。ピッチに応募する手続きと観覧の申込は別で、観覧席の確保によって発表者として参加できるわけではありません。

創業年数だけでなく、製品の条件も確認

主な応募条件は、概ね創業後10年未満、または第二創業後10年未満であることです。一般社団法人、合同会社、個人事業主なども含むとされ、業種による制限はありません。ただし、形態や年数の条件だけで、すべての申込が認められるわけではありません。

テーマに合う製品やサービスを持ち、最新バージョンのリリースから5年以内であることなどが条件です。第二創業には製品・サービスの新規リリースや大きな改良も含まれます。自社の取組が該当するか判断に迷う場合は、運営事務局に相談するよう都は案内しています。

過去にこの事業で優勝した場合は応募対象外とされています。また、公序良俗に反する事業など、東京都の支援が適さないと判断される場合についても条件があります。過去の採択や別制度での支援と今回の応募資格を混同せず、募集要項を一つずつ確認する必要があります。

審査では、テーマとの適合性、行政と協働した際の課題解決の見込み、新規性や独創性、社会的な影響、財務状況、生産・提供計画の適切性などを見て5社を選ぶとしています。斬新な発想を示すだけでなく、実際に提供し続ける体制があるかも確認される構成です。

アーティストと参加者の双方を中心に考える

障害のあるアーティストの作品を使う提案では、作品の利用に関する合意や作者の意向を踏まえることが実務上の大切な点になります。広報素材として扱うだけでなく、創作の背景や作者が伝えたいことをどう尊重するかという課題があります。今回の募集に応募すれば、あらゆる作品を自由に使用できるわけではありません。

参加する人にも、一律の体験が合うとは限りません。音や光の刺激、会場の移動、説明の分かりやすさ、介助者と一緒に使えるかなど、参加の条件はさまざまです。提案を具体化する際は、障害の種別だけで利用者像を固定せず、本人の希望を確かめられる仕組みを考えることが重要になります。

福祉施設の現場では、移動や日程の調整、機器の設定、職員の支援などが必要な企画もあります。楽しい体験を用意しても、準備の負担が大きければ参加しにくくなる場合があります。提供するサービスの操作と、施設側が担う作業を分けて説明することが、実行可能性を考える材料になります。

オンラインの体験は移動の負担を減らす可能性がありますが、通信環境や端末の準備という別の条件が生まれます。逆に、会場での交流には偶然の出会いや作品の質感を共有できる場面もあります。どちらかを一律に優れた方法と決めるのではなく、参加したい人の選択肢をどう増やすかが論点です。

家計に関わる情報では、参加費、交通費、通信費、必要な道具などが気になります。しかし今回の募集段階では、採用する企画や、その参加条件は決まっていません。将来のイベントが無料になる、端末が提供されるといった内容は確認されておらず、提案例から費用負担を推定することはできません。

企業側も、優勝後の協議に備えて、必要な人員、提供範囲、保守、利用者への説明などを考える必要があります。体験を一度実施することと、複数の会場や施設で続けることでは条件が変わります。行政の課題に合うことに加え、現場で無理なく使える計画が事業化の判断材料になります。

個人情報を扱う提案では、参加申込や作品応募のために何を集めるかも重要です。病名や支援の情報を不必要に入力させる設計は、参加の心理的な負担になる可能性があります。今回の発表はデータの収集範囲を一律に決めたものではなく、具体的な企画に応じて検討する論点です。

成果を測る際には、閲覧数だけでなく、初めて参加した人がいるか、再び活動に関わる機会につながるかなども考えられます。ただし、都が今回それらすべてを公式の指標に設定したと確認されたわけではありません。何を目指す企画なのかを明確にしたうえで、必要な評価方法を協議することになります。

今後の節目は、応募の締切、5社の選出、プレピッチ、本番の審査結果、その後の協働に向けた協議です。文化祭の詳細日程や、採用したサービスの提供条件が公表された段階で、参加者向けの情報を更新する必要があります。現時点では優勝企業や契約内容は未決定です。

作品をデジタル化する企画では、展示用の画像を用意するだけでなく、作品名や説明をどう伝えるかも参加体験に関わります。文字、音声、映像など、情報の受け取り方を選べるかという視点があります。ただし、すべての機能を盛り込めば使いやすくなるとは限らず、利用者が迷わず楽しめる構成と運営側の対応範囲を一緒に考える必要があります。

周遊型の提案であれば、会場間の移動や途中で休める場所、参加を中断する場合の案内も検討事項になります。作品に触れる前後の時間まで含めて、参加できる条件を考えることが大切です。

出典:東京都産業労働局「UPGRADE with TOKYO 第63回開催決定」(2026年10月29日公表)。https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/10/2026102912
写真は芸術作品のイメージで、応募作品や文化祭の出展作品ではありません。

まとめ

東京都は、障害の有無にかかわらず芸術文化へ参加するきっかけをつくるスタートアップの提案を、11月24日18時まで募集する予定です。5社によるピッチは12月18日に計画され、優勝後も協働の条件を詰める段階が続きます。技術の新しさとともに、作者の意向や参加者・施設の使いやすさを考えることが重要です。