東京都は10月29日、ペロブスカイト太陽電池を指す「Airソーラー」の量産化と市場形成を後押しする取組を公表しました。導入を検討する自治体や企業と開発事業者を結ぶ相談・マッチング支援に加え、開発事業者の展示会出展費を上限300万円で助成します。家庭への一律給付や、製品価格の引下げを決めた発表ではありません。
都が掲げるのは、2035年に都内で約1ギガワットを導入する目標です。これは将来の設備導入を目指す値で、現在すでに稼働している量でも、今回の支援だけで確実に達成できる量でもありません。新しい太陽電池を社会で使うために、開発、利用する場所、販路をつなぐ段階の施策として読む必要があります。
Airソーラーは、ペロブスカイトという結晶構造を使う太陽電池です。都は薄さ、軽さ、曲げられる性質を特徴として挙げています。従来の太陽電池を設置しにくかった場所にも用途が広がることが期待されますが、どの建物にもそのまま貼れる、設置の確認が不要になるといった意味ではありません。
二つの支援は、相談の仕組みと展示会費用
量産化・市場形成促進事業では、クール・ネット東京をコーディネーターとして設置します。区市町村や民間事業者などから導入に関する相談を受け、案件づくりのためのマッチングを支援する仕組みです。製品を開発する側と、建物や設備を保有して利用を検討する側の接点をつくる役割になります。
一方、展示会出展支援事業の対象はAirソーラーを開発する民間事業者などです。主たる展示内容がAirソーラーである出展について、展示会等参加費や販売促進費などの対象経費の10分の10を、上限300万円で助成するとしています。支払った費用が無条件ですべて戻る制度と理解するのは適切ではありません。
主な要件には、都内で導入・実証の実績があるか、その計画があること、都の広報活動に協力できることなどがあります。対象となる国内外の展示会にも条件があります。自社が対象になるか、どの費目が認められるかは、募集要項と申請窓口の説明で確かめる必要があります。
申請受付期間は2026年10月29日から2027年3月31日までです。ただし、申請総額が予算額に達した時点で終了します。事業期間は2026年度と2027年度で、予算額は1500万円と案内されています。期間が残っていても、受付が続いているとは限らない点に注意が必要です。
軽さの利点を、建物ごとの条件に置き換える
軽い太陽電池への期待は、設備の重さが制約になっていた建物で導入を考えやすくなることです。ただし、荷重だけが判断材料ではありません。固定方法、風雨、配線、保守のための作業場所なども検討対象になります。今回の発表は、個別の屋根や壁面の施工可否を認定するものではありません。
建物所有者が相談するときは、建物の用途や図面、利用可能な場所、改修の予定などを整理すると、開発事業者と話しやすくなります。発電量だけでなく、設置によって点検や清掃の方法がどう変わるかも確認事項です。新技術であることと、日々の管理が簡単になることは同じではありません。
自治体の施設では、庁舎、学校、体育施設など、それぞれで使い方と管理する人が異なります。実証に向く場所と、安定した長期運用を優先する場所を分けて考える必要があります。導入の相談窓口ができたことは検討の入口ですが、特定の公共施設への設置決定を示すものではありません。
発電設備を設置する場合でも、停電時にどの機器を使えるかは別の設計事項です。太陽電池があるという理由だけで、災害時も建物全体に電気が供給されるとは限りません。蓄電池や切替設備を含む仕様、運用方法を確認して初めて、非常時の役割を評価できます。
量産化への支援と、家庭の電気代への距離
都は製造技術の開発によって、大量生産や製造コストの低下が期待できると説明しています。期待される方向性と、実際に販売される製品の価格は分けて見る必要があります。工場の生産能力、歩留まり、材料、品質保証など、量産には複数の条件が関わるためです。
今回の展示会支援は、技術の紹介や販路の開拓にかかる負担を減らすものです。展示会で商談ができても、契約、製品評価、現場調査、施工へと進むには時間が必要です。助成の開始から直ちに大量供給や販売価格の下落につながると断定できる状況ではありません。
家庭が最も気になる電気代への影響も、今回の発表だけでは金額を示せません。発電設備の購入費、工事費、維持費と、実際の発電量や自家消費の仕方によって変わります。特定の住宅について、何年で費用を回収できる、月々いくら安くなるといった数字は未確認です。
賃貸住宅や集合住宅では、設備を導入する主体と電気を使う主体が異なる場合があります。所有者、管理組合、入居者のどこに便益や費用が帰属するかを契約で確かめる必要があります。技術の性能だけでなく、利用者に利益が届く仕組みが整っているかが判断材料になります。
開発企業の担当者は、助成上限の額だけで出展計画を決めず、何を成果とするかを整理したいところです。見込み客との接点、実証場所の確保、導入条件の収集など、商談の目的によって展示の内容は変わります。助成対象外となる費用や自社の人員負担も含めた計画が必要です。
主原料の国内供給と、設備全体の供給網
都は、主原料となるヨウ素の世界産出量のおよそ30%が日本国内産だと説明しています。国内の資源と技術を生かせる点は、この分野への期待の一つです。ただし、主要原料の一つを国内で調達できることだけで、すべての部材や製造工程が国内で完結するとはいえません。
供給の安定性を評価するには、材料の品質、加工、生産設備、検査、交換部品までを見る必要があります。調達先を増やすことと、一つの技術に全面的に依存することは別の判断です。今回の支援が供給網をどこまで強くするかは、実際に形成される事業や生産計画を確認して評価する段階です。
環境面でも、発電時の性質だけで設備の一生を判断することはできません。製造、輸送、使用、撤去、回収までの取扱いを確認したいところです。この記事で確認した発表には、すべての製品に共通する寿命や回収費用の確定値は示されていないため、一律の性能を記すことは避けます。
写真に使われているのは一般的な太陽光発電設備のイメージで、今回支援されるAirソーラーの製品写真ではありません。見た目が似た発電設備でも、材料や構造、設置条件は異なります。製品を選ぶときは、掲載写真ではなく、開発事業者の仕様書と現場の条件を照合する必要があります。
次に確認するのは、相談から導入につながる具体例
今後の焦点は、コーディネーターを通じてどのような実証や導入案件が生まれるかです。相談件数だけでなく、用途、実施場所、運用期間、保守方法が示されれば、ほかの施設が検討する際の材料になります。ただし、個別案件の公表範囲や時期は今回の資料では確定していません。
展示会支援については、申請受付の継続状況、要項の更新、採択後の成果などを確認します。予算額を上限額で単純に割って、採択される企業数が確定したとすることはできません。各申請の対象経費や審査によって、実際の支援額は異なるためです。
導入を急ぐ利用者ほど、今ある製品の購入、今後の実証への参加、技術の成熟を待つ選択を分けて考えることが役立ちます。今回の新制度だけを理由に既存設備の更新計画を止めたり、性能が未確認の契約を結んだりする必要はありません。使用目的に合う根拠を揃えて判断することが大切です。
相談を具体化するには、使用する時間帯も材料になります
建物で電気を多く使う時間と、発電する時間の関係によって、設備の使い方は変わります。昼間に人が多い施設と、夜に稼働する施設では、同じ設備容量でも考える条件が異なります。導入相談では、現在の使用状況を分かる範囲で整理しておくと、目的に合う検討につながりやすくなります。
屋根や壁を借りて設置する場合は、建物を使う期間と発電設備を使う期間の整合も確認事項です。途中で改修や退去が必要になったとき、取り外しや復旧を誰が負担するかが曖昧だと、後から費用の問題が生じる可能性があります。設備価格の比較と合わせて、契約の期間や終了時の条件を確認する必要があります。
実証に参加する際は、何を計測し、誰がデータを管理するかも重要です。試す段階で得られた情報は次の導入を考える材料になりますが、実証の場所や条件を離れて同じ性能を保証するものではありません。結果の公表では、試験の条件と実際の使用環境の違いを併せて見ることが大切です。
出典:東京都環境局・東京都環境公社「Airソーラーの量産化・市場形成を支援します」(10月29日公表)。https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/10/2026102917
まとめ
東京都はAirソーラーの導入相談と企業間の連携、開発事業者の展示会出展を支援します。将来の普及を後押しする施策として、申請要件と個別製品の性能、建物の条件を確かめ、家庭の電気代への効果は具体的な導入計画が見えてから評価する必要があります。
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