東京都は10月29日、石油由来ナフサの代替素材などを開発する支援対象として、Green Earth Instituteと三菱ケミカルの2事業者を決めたと発表しました。木質バイオマスや廃プラスチックなどを活用する技術開発を支えます。採択は開発への支援決定であり、量産の完了や製品の値下げ、石油からの全面的な置換を確定したものではありません。

都は、中東情勢などの影響でナフサの安定調達に不確実性が高まったことを受け、石油だけに依存しない技術や素材の開発を促すと説明しています。今回の事業は、日々の調達をただちに肩代わりする緊急供給ではなく、中期的に原料の選択肢を増やすための支援として位置付けられます。

ナフサは石油化学の原料として使われ、そこからつくられる基礎化学品や樹脂はさまざまな製品につながります。原料の供給が不安定になれば、素材、部品、完成品の各段階で調整が必要になる可能性があります。ただし、今回の資料から、特定の商品が品不足になる時期や値上げ幅まで判断することはできません。

二つの開発は、原料と工程が異なる

Green Earth Instituteの事業は、木質バイオマス由来のバイオイソブタノール製造によって、化学品の代替原料の供給基盤を構築するものです。連続発酵の生産条件、精製プロセス、事業開発体制を検討するとしています。名称だけで、すでに商業規模で供給できる体制が整ったと受け取らないことが必要です。

発酵で原料をつくる工程と、それを求められる品質に整える工程は別の課題です。実験で目的物が得られることと、安定した量・品質で供給できることの間には検証が必要になります。今回示された開発項目は、その段階の違いを読み取る手掛かりになります。

三菱ケミカルは、油化技術を用い、廃プラスチックやバイオマス由来のナフサを開発します。廃プラスチックでは原料の活用拡大に向けた油化プロセスの高度化、バイオマスでは未利用資源の探索や油化試験を通じた全体工程の開発を行うとしています。こちらも技術開発の内容が示された段階です。

同じ代替原料という言葉でも、二つの事業が目指す工程や出発点は同一ではありません。両社の採択を、同じ製品を同じ条件で供給する計画としてまとめると違いが見えなくなります。今後の評価では、それぞれが何をつくり、どの用途に使えるかを分けて見る必要があります。

支援額の上限と、実際の交付額は別

事業は開発に必要な経費を支えるほか、専門家の助言や連携企業とのマッチングによる伴走支援を行います。期間は最長3か年度です。経費だけでなく、技術と実際の利用先をつなぐ支援が含まれる点が、開発を事業化に近づけるための特徴といえます。

協定金の年度別上限は、2026年度が1億円、2027年度が2億円、2028年度が3億円と案内されています。これは制度上の上限であり、今回の各社が必ず満額を受け取ると確定した数字ではありません。年度の上限を足して、2社への支払総額として報じることもできません。

実際の支援額、開発の進み方、各年度の実施内容は今後の公表を確認する必要があります。採択の段階で確認できるのは、対象となった企業と事業の概要です。まだ発表されていない生産量や売上、供給開始日を、期待から補って書くことは避けます。

代替できる範囲は、品質と用途で決まる

素材を使う企業にとって大切なのは、石油由来でないという説明だけでなく、必要な性能を満たすかという点です。強度、加工のしやすさ、耐久性など、求める条件は用途によって変わります。代替原料からつくった素材が、すべての既存製品に同じ方法で使えるとは限りません。

取引先が使用する原料を変える場合、試作品の評価や製造条件の調整が必要になる可能性があります。供給元の開発が進んでも、利用する側の確認が終わらなければ量産に移れない場合があります。原料の開発と製品への採用は、連続していても別の節目になります。

今回の事業で、すべての利用企業に材料変更が義務付けられたわけではありません。調達の担当者は、現在の契約や品質条件を確認しつつ、新しい選択肢として情報を集める段階です。採択のニュースだけで、使用中の材料が急に使えなくなると判断する必要はありません。

包装材や日用品など身近な製品でも、使う場所や内容物によって確認事項は異なります。原料の名称が変わったことだけで安全性や性能の優劣を決めることはできません。実際の商品については、製品ごとの規格、試験、表示などを確認して判断することになります。

資源を集める仕組みも、開発の一部

廃プラスチックを使う技術では、回収したものを安定して集められるかが関わります。量だけでなく、混ざっている物や品質のばらつきによって、前処理や工程が変わる可能性があります。技術そのものの評価に加え、回収から運搬、選別までの流れをつなぐ条件を見ることが重要です。

バイオマスでも、未利用資源が存在することと、必要な時期に必要な量を運べることは同じではありません。保管、乾燥、運送、他の用途との関係などを検討する必要があります。今回の資料では、原料を調達する地域や具体的な量がすべて確定したとは確認できません。

家庭の分別については、今回の開発支援を理由に出し方が変わるわけではありません。何でも混ぜて出せば原料にできるという理解は適切ではなく、自治体や回収事業者の案内に従う必要があります。技術の進展と、生活者に求められる具体的な分別方法は別の情報です。

回収する側にも、実際に使われる原料の条件が見えれば、どの資源をどう整えるかを考える材料になります。ただし、新技術の採択だけで、すでにある回収や再利用の仕組みが不要になるとはいえません。複数の方法をどの用途に使うかを検討する段階です。

家計に届くまでには、いくつもの段階がある

原料の選択肢が増えることは、供給の安定性を考えるうえで意味があります。しかし、開発支援から店頭の商品までには、試験、設備、契約、製造、流通の段階があります。今回の発表を受けて、来月から日用品が安くなるといった予測を確定的に示すことはできません。

代替原料の製造に費用がかかる場合もあれば、量産や工程の改善によって条件が変わる場合もあります。現段階で価格の優位性を一律に判断するには情報が足りません。比較する際には、原料費だけでなく輸送、品質の確認、製造変更などの費用も含める必要があります。

消費者が将来の商品表示を見るときは、バイオマスや再生原料を使った範囲と割合を確かめたいところです。一部の素材に使われていることと、製品全体が石油を使わないことは異なります。今回採択された技術を使う商品の具体的な表示や発売時期は、この記事では未確認です。

環境への効果も、原料の由来だけで決められません。製造で使うエネルギーや運送、使った後の処理などを含めて評価する必要があります。都の支援決定は環境面への期待を含むものですが、すべての製品に共通する削減率が確定した発表ではありません。

次の節目は、実証と事業化の具体的な条件

続報では、工程の検証結果、原料の調達体制、利用する企業との連携、量産に向けた設備計画を確認します。開発中の成果と、商業供給の開始を区別することが大切です。試作品の完成だけで、供給量や契約条件まで整ったと受け取らないようにします。

支援の効果を考える際も、採択件数だけでは評価できません。安定した品質を確保できるか、継続的な調達が可能か、利用側の要求に応えられるかが判断材料になります。今回の2事業者の取組は、それぞれ異なる工程で選択肢を広げる試みとして追う必要があります。

調達先を増やすことと、切替を終えることの間

素材を使う現場では、供給候補の企業と話し始めた段階、試作に使う段階、量産で使う段階を分けて管理することが役立ちます。どの段階まで進んでいるかが共有されていないと、営業が説明する供給予定と、製造が確認した品質条件がずれる可能性があります。

設備の変更が必要かどうかも、採用を判断する重要な条件です。既存設備で使える場合でも、保管や投入の方法、清掃、検査などの運用が変わることがあります。原料の名称だけで置換の容易さを決めず、工程全体の確認が必要になります。今回の発表には、すべての用途で設備変更が不要になるという説明はありません。

長期の供給契約に進む際は、開発の成果が予定に届かなかった場合の対応も検討事項です。別の調達方法を残すのか、試験の節目で判断を更新するのかなど、段階に合う計画が必要になります。採択という一つの節目を、利用側の調達準備が完了した意味に広げないことが大切です。

出典:東京都産業労働局「石油由来ナフサの代替素材について都が支援する開発事業者が決まりました」(10月29日公表)。https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/10/2026102913
写真は企業活動を表す建物のイメージで、採択企業の本社や開発設備ではありません。

まとめ
東京都は、木質バイオマスや廃プラスチックなどを活用する2事業者の技術開発を支援します。原料の選択肢を増やす取組として注目しつつ、量産、品質、費用、家庭の商品への反映は今後の実証や事業化の情報で確認する必要があります。