東京都と東京都中小企業振興公社は10月29日、豪雨災害に備えるBCP普及啓発セミナーを12月4日にオンラインで開くと発表しました。午後2時から3時20分まで、定員は100人程度で参加費は無料です。2026年8月の千葉豪雨などの事例を踏まえ、中小企業が中核事業の継続や早期復旧を考える内容になります。
BCPは事業継続計画のことです。災害や事故などで普段どおりの仕事ができなくなったときに、何を優先し、どの仕事を続け、どの順番で戻すかを考える計画です。今回の発表は学ぶ機会の案内であり、個別企業の計画を認定したものでも、災害の発生を予告したものでもありません。
セミナーはZoomウェビナーで開催されます。講師は富士通の大谷茂男シニアディレクターで、近年の豪雨と企業活動への影響、企業に求められる備え、風水害に適応するBCP、事業継続力を強くする取組を扱う予定です。参加希望者は公社のホームページから申し込む形です。
避難の備えと、事業を戻す準備はつながっている
災害への備えというと、まず人の安全や備蓄が思い浮かびます。それに加えて事業所では、従業員が出勤できない、材料が届かない、機器を使えないといった状況も考える必要があります。安全を確保した後に仕事をどこまで続けられるかを平時から整理することが、BCPをつくる意味になります。
重要なのは、計画があることで危険な出勤や操業を求めることにならないようにする点です。人の安全を優先し、休止を含む判断を誰が行うかを決める必要があります。事業継続という言葉を、どんな状況でも営業を続けるという意味に縮めると、現場の判断を難しくします。
中小企業では、一人が複数の役割を兼ねていることがあります。代表者や設備に詳しい担当者が不在になった場合に、連絡、契約、支払い、復旧の判断が一度に止まる可能性があります。担当者の名前を並べるだけでなく、代わりに判断できる範囲と、確認が必要な内容を共有しておくことが実務上の課題です。
今回のセミナーで紹介される事例の詳細は、実際の講演を確認する必要があります。この記事で述べる準備の視点は一般的な整理であり、講師が具体的に推奨した対策として紹介するものではありません。受講前には、自社で困りそうなことを整理しておくと、事例を自分たちの仕事に置き換えやすくなります。
豪雨では、建物の外と中の両方を見る
風水害への備えでは、事業所が浸水する可能性だけでなく、従業員の通勤経路や取引先までの道が使えるかも関係します。自社の建物が使えても、必要な人や物が来なければ通常営業は難しくなります。周辺の地形や自治体の情報を、自社だけの事情と切り離さずに確認することが必要です。
設備や在庫がある現場では、止まると困る機械、移動できる品物、すぐには動かせないものを分ける考え方があります。すべてを守ろうとして準備が進まない場合は、中核の仕事に必要なものを先に洗い出す方法が考えられます。実際の移動や固定の作業は、設備の安全条件に合う手順で行う必要があります。
電気設備や通信機器は、置かれている場所によって影響が異なります。机の上の端末だけでなく、配電やネットワークの設備がどこにあるかも確認事項です。ただし、この記事は個別の電気工事や設備の移設を勧めるものではありません。専門の管理者と確認すべき内容を明らかにする段階です。
紙の帳票や取引先の連絡先も、仕事を再開するための資源です。データを別の場所に残していても、閲覧するための端末や権限がなければ使えません。保存したことと、非常時に取り出せることを分けて点検すると、形式的な備えで終わりにくくなります。
取引先と決めておきたい、連絡と納期の扱い
豪雨による影響が広がると、仕入れ先や配送事業者も同時に困る場合があります。代替の業者を一つ探しただけでは、地域全体の混乱に対応できるとは限りません。どの程度の遅れが生じると業務を止める必要があるか、在庫や納期の条件と合わせて考えることが大切です。
取引先への連絡では、分かっている影響、まだ分からないこと、次に連絡する時刻を区別すると説明がしやすくなります。復旧時刻が未確認の段階で、無理に確約すると後の調整が難しくなります。社内で確認した情報を一つにまとめ、担当者によって異なる説明にならない工夫が必要です。
小売や飲食の事業者であれば、営業時間の変更、予約、商品の受け渡しについて、利用者が確認できる入口を整えることも備えになります。店舗の前に行かなければ休業が分からない状態では、利用者と現場の双方に負担がかかります。どの連絡手段を使えるかは、停電や通信の状態も踏まえて考えます。
受託業務では、納期を守れない場合の相談先や代替方法を、契約内容と照らし合わせる必要があります。災害があればすべての責任が自動的に免除されると決めつけることはできません。今回の発表は契約条件を変更するものではなく、法的な判断が必要な問題は個別に確認することになります。
家計に届く影響は、営業再開の速さだけではない
従業員にとっては、勤務の有無が収入や育児、介護の段取りに関わります。会社が営業するかどうかだけでなく、出勤できない場合の連絡方法、在宅で対応できる仕事、休業時の説明が整理されていると、生活の見通しを立てやすくなります。賃金や休暇の取扱いは、会社の制度と適用されるルールに沿って確かめる必要があります。
経営側も、修理費だけでなく、売上が入らない期間の支払いを考える必要があります。家賃、リース料、仕入れ代金などの支払日と、手元の資金を照合することが復旧判断の材料になります。今回の無料セミナーに参加しても、設備費や損失が補償される制度ではありません。
保険に加入している場合には、補償の対象と手続きの確認が別に必要です。自然災害という大きな区分だけで、浸水、停電、休業の損失がすべて対象になるとは限りません。契約先に確認できるよう、設備や在庫の一覧、記録を平時から整理しておく視点があります。
地域の小さな事業所が再開できることは、住民の買い物や修理、配送の選択肢にも関わります。自社の利益だけでなく、地域で求められる役割を知ることも中核業務を選ぶ材料です。ただし、地域のためという理由で従業員の安全を後回しにすることがないよう、優先順位を共有することが重要です。
計画をつくった後に、使えるかを確かめる
BCPは厚い資料を完成させることだけが目的ではありません。連絡網に古い番号が残っていないか、代行する担当者が権限を持っているか、休日にも必要な情報を見られるかなど、実際の場面を想定して確認する必要があります。小さな確認でも、机上では気付かなかった問題を見つけることがあります。
確認の際は、全業務が止まる極端な想定だけでなく、半日遅れる、担当者が数人来られない、一部設備だけ使えないといった条件も考えられます。どの条件なら継続でき、どこで休止に切り替えるのかを話すことで、現場に合う判断の幅を持たせやすくなります。
新しい取引先や設備が増えたとき、事務所を移したときには計画の前提も変わります。一度策定した日付だけを実績として残すと、現在の仕事とずれてしまいます。見直しの担当と機会を決め、変更した内容が従業員に伝わる形にすることも運用の一部です。
受講を検討する企業は、12月4日午後2時からの80分を確保できるか、オンライン視聴の環境があるかを確認します。定員は100人程度で、現時点の空き状況や受付終了日はこの記事では未確認です。公社の申込ページで最新の案内を確認する必要があります。
続報では、申込受付の更新、開催方法の変更、受講後に使える資料や相談支援の案内などを確認します。今回の告知から、全企業にBCPの提出義務が新設されたとは読み取れません。学ぶ機会を自社の備えに生かすことと、制度上の義務の有無は区別して判断します。
情報を更新する担当を決めることも備えです
災害時には、気象、道路、公共交通、取引先からの連絡が別々の時刻に更新されます。誰かが見た古い画面が社内に残ると、休止や再開の判断に行き違いが生じます。確認した時刻と情報元を添えて共有し、次にどの情報を見て判断するかを決める方法があります。
営業を再開する際も、建物に入れることと、設備を安全に使えることは別の確認です。現場ごとに管理者や専門業者の点検が必要な場合があり、売上を戻したい事情だけで手順を省くことはできません。復旧の順番を考えるときには、確認を受ける相手と連絡の方法も含めたいところです。
受講後には、学んだことを全社の大きな改定にまとめる前に、一つの業務で連絡や代行を試す進め方も考えられます。担当者だけが内容を理解した状態で終わらず、実際に動く人が迷う点を確かめることが、計画を現場で使える形に近づけます。
出典:東京都産業労働局「BCP普及啓発セミナーを開催します」(10月29日公表)。https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/10/2026102921
写真は事業計画を話し合う場面のイメージで、セミナーや被災企業の写真ではありません。
まとめ
12月4日の無料オンラインセミナーは、豪雨を踏まえた事業継続の備えを学ぶ機会です。参加を検討する企業は公式の受付状況を確かめ、人の安全、中核業務、連絡、資金という自社の課題を整理して受講につなげることが役立ちます。
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