東京都は10月29日、都内中小企業などに向けた「カーボンクレジット創出セミナー2026」を11月24日にオンラインで開催すると発表しました。参加費は無料で、基礎知識、企業や農業の取組事例、都の支援策を紹介する予定です。参加すればクレジットの認証や販売収入が保証されるという催しではありません。

開催時間は11月24日13時から14時45分までです。申込と詳細の確認は、都の発表から案内される特設ホームページで行うよう示されています。今回確認した発表本文には申込の締切や定員の具体的な記載がなく、参加を考える企業は特設ページの受付条件を確認する必要があります。

都は2050年のゼロエミッション実現に向け、中小企業などの脱炭素化を進めています。今回のセミナーは、制度の説明だけでなく、実際の事業者の経験を通じて自社との接点を考える機会です。別途開設された総合ポータルが情報を随時調べる入口なのに対し、こちらは日時を定めて講演や事例紹介を行う予定の催しです。

削減した量を、そのまま自由に売れるわけではない

都の説明では、カーボンクレジットは、省エネ設備の導入や森林管理などによる二酸化炭素の排出削減量・吸収量について、第三者による検証などを経て、企業間で取引できるよう認証したものです。環境に良い取組を行ったという自己申告だけで、直ちに取引できる商品になるわけではありません。

企業が最初に考えたいのは、自社の取組がどの制度の対象となり得るかという点です。設備の種類、実施時期、測定方法、必要な記録などによって、扱いが変わる場合があります。今回の開催案内は、個別企業の計画が認証の条件を満たすと判定した資料ではありません。

また、クレジットをつくることと購入して活用することは、役割が異なります。今回のセミナーは「創出」をテーマとしていますが、知識を得た結果、自社では別の省エネ対策を優先するという判断も考えられます。制度を使うこと自体を目的にするのではなく、事業上の課題との関係を確認することが大切です。

排出削減量を計算する際には、何と比較して減ったのか、どの期間の活動を対象にするかが重要です。売上や生産量が減ったために使用量が下がった場合と、同じ仕事を少ないエネルギーで行えた場合では、意味が異なることがあります。認証の考え方や具体的な要件は、各制度の正式な資料で確認する必要があります。

入門講演と、製造業・農業の事例を予定

基調講演では、東京環境経営研究所理事で中小企業診断士の水野智子氏が、中小企業のクレジット創出の入門を扱う予定です。制度に接したことのない企業も想定した内容として案内されています。ただし、講演を受けることが資格取得や審査の代わりになるという説明はありません。

企業事例では、明治鋼業常務取締役の松村洋一氏が、中小規模企業による脱炭素経営の実践を紹介する予定です。取組を始める際に何を整理したか、通常業務との関係をどう考えたかなど、制度の解説だけでは見えにくい運用面を知る材料になることが期待されます。実際の講演内容は開催後に確認する必要があります。

農業の事例では、ファームマチダ東京代表取締役の松井優一氏が、農地でのクレジット創出やプログラム型プロジェクトについて説明する予定です。都の案内は、畑に炭をまく取組などを紹介しています。一般の家庭で炭を使えば、そのまま同じ認証を受けられるという意味ではありません。

さらに、東京都の支援策の紹介も予定されています。プログラムや登壇者は変更される場合があるとされており、申込後の連絡や特設ページの更新を確認する必要があります。開催前の段階で、具体的な発言や参加者の反応を事実として書くことはできません。

小さな企業ほど、費用と事務の全体像を確かめる

事業者にとって気になるのは、クレジットの収入が取組にかかる負担と釣り合うかという点です。設備や資材だけでなく、計測、記録、申請、確認への対応などにも時間が必要になる場合があります。制度ごとの条件を確かめずに、想定する売却額だけを事業計画に入れることは避ける必要があります。

認証された量と、実際に売れた量も同じではありません。価格や取引条件は契約などによって異なり、今回のセミナーの案内に将来の売却単価や買い手の保証はありません。記事では未確認の相場を使って、企業ごとの収益額を試算していません。

複数の事業者が参加する仕組みでは、手続きをまとめられる可能性がある一方、参加者と取りまとめ側の役割を確認する必要があります。誰が記録を集め、費用を負担し、収益をどう扱うかは事業の継続性に関わります。今回の発表はプログラム型の事例を紹介する予定であり、すべての企業に同じ条件を提供する募集ではありません。

既に省エネ設備を導入した企業も、過去の取組が対象になるかは別途の確認が必要です。導入済みという事実だけで遡って認証されるとは限らず、開始時期や手続きの条件を確かめることになります。これから契約する企業は、設備選定と制度の申請時期を切り離さずに確認する視点が重要です。

設備の更新には、故障の予防、生産の安定、光熱費の削減など、クレジット以外の目的もあります。認証の収入を得られなければ設備投資の意味がなくなる、という計画なのかどうかを整理することが、無理のない判断につながります。今回の催しは、特定の設備の購入を義務付けるものではありません。

環境への説明と、製品の表示は丁寧に

企業が取組を取引先や消費者へ説明する場合は、何を減らしたのか、どの範囲の活動なのかを明確にする必要があります。工場の一部の取組を、会社全体の排出がなくなったという説明に広げることはできません。クレジットをつくる側と使う側の主張が、混同されないようにする視点も大切です。

取引先から脱炭素に関する情報を求められた際にも、認証の有無だけでは対応しきれない場合があります。使用したエネルギーや事業活動の範囲など、相手が何を確認したいのかを把握する必要があります。セミナーへの参加をもって、すべての環境報告を満たせると考えることはできません。

農業では、農地の管理、生産物の品質、作業の負担など、本来の営農との両立が前提になります。環境に関する取組が加わることで、通常の仕事をどう変える必要があるかを考えることが重要です。今回紹介される予定の事例が、あらゆる作物や農地で同じ効果を得られると示すものではありません。

一般の消費者にも、商品の環境表示を読む際の参考になります。クレジットに取り組む企業の製品であることと、その製品の価格、性能、製造時の排出量がどのような水準かは別の情報です。取組の名称だけで商品全体を評価せず、説明されている範囲を確かめることが大切です。

家計への影響では、今回のセミナーが食品や日用品の値下げを決めたわけではありません。また、家庭向けの新しい給付や電気料金の変更を案内するものでもありません。事業者の脱炭素化が費用や取引の条件にどう表れるかは、個々の取組の進展を見て確認する必要があります。

オンライン参加を、社内で使える知識にする

参加企業では、経営、設備、経理など、関わる担当によって知りたい内容が異なる場合があります。講演を聞く前に、自社の取組の開始時期、使っている設備、残せる記録、関心のある制度を簡単に整理すると、疑問点を見付けやすくなります。ただし、機密情報を外部へ送る範囲は、申込に必要な事項と分けて考える必要があります。

オンラインであるため移動は不要ですが、視聴する時間と通信環境は確保する必要があります。申込後に案内される接続方法を確かめ、社内で複数人が見る場合の条件も主催者の案内に従います。今回の発表には、録画の後日公開や見逃し配信が必ず行われるという記載はありません。

講演を聞いた後は、制度の公式資料を確認し、自社で検討する価値があるかを整理する段階になります。制度の名称が似ていても、対象や審査の手続きが異なる場合があります。紹介された事例を参考にしながら、自社の条件に対応する専門窓口へ質問を具体化することが次の行動につながります。

今後の確認点は、申込受付の条件、開催内容の変更、11月24日の実施、その後の資料公開の有無です。実際の認証や事業化の成果は、参加企業の取組が進んだ後に別途確認する必要があります。現時点で、このセミナーによる削減量や参加者の収益を示す実績はありません。

出典:東京都産業労働局「東京都カーボンクレジット創出セミナー2026を開催」(2026年10月29日公表)。https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/10/2026102918
写真は森林のイメージで、紹介予定の企業や対象の農地を撮影したものではありません。

まとめ

東京都は11月24日、中小企業など向けにクレジット創出の無料オンラインセミナーを開く予定です。製造業や農業の事例から学べますが、認証や売却収入は参加だけで保証されません。費用、記録、制度の要件を確認し、自社の省エネや事業計画と結び付けて検討することが重要です。