2025年の「令和の米騒動」から一転、2026年産のコメは余りと値下がりが鮮明になっています。肥料や燃料など生産コストが高止まる一方で、買い取り価格の目安となる概算金は前年を大きく下回り、現場では離農を口にする農家が増えています。

千葉や福井など産地の取材では、「とんでもない赤字」「政府には何の期待もできない」といった声が相次いでいます。消費者にとっては値下がりが追い風になり得る一方、生産基盤の縮小が進めば、中長期では再び供給不安につながる恐れもあります。

何が起きているのか

農林水産省の公表などによると、民間在庫は高水準で、店頭の米価も下落基調が続いています。スーパーなどの5キロ平均価格は、2026年夏時点で3300円台まで下がったとの報告もあります。

産地側では、JAが収穫前後に農家へ前払いする概算金の下落が衝撃を広げています。早場米産地では、コシヒカリで60キロ当たり1万4000〜1万8000円程度の提示が報じられ、前年比で2〜4割安となる地域もあります。専門家からは、新米の店頭価格が5キロ3000円前後になるとの見方も出ています。

コストは上がり、売値は下がる

問題は、売値だけでなくコスト構造です。福井市で約50ヘクタールを耕作する米農家の白井清志さんは、2026年に仕入れた肥料だけで900万円に達し、前年の約2倍だったと報じられています。燃料代や農機具の価格も上昇傾向です。

一方、白井さんは買い取り価格を1俵(60キロ)あたり1万6000円程度と見込み、生産原価は2万2000〜2万3000円程度だと説明しています。売値が原価を大きく下回れば、規模が大きいほど赤字も膨らみます。「とんでもない赤字」「今年で農家をやめる人が出てきた」との発言は、そうした採算割れを背景にしています。

千葉では、米農家の多田正吾さんが、JA全農千葉のコシヒカリ概算金を約1万8000円と説明し、「2万円くらいは出るのかなと思った」と戸惑いを語っています。灯油や農機具の値上がりも重なり、設備投資にも慎重にならざるを得ない、という声です。

価格が見えないまま収穫が進む産地も

福井では、ブランド米「ハナエチゼン」の収穫が始まる一方、JA福井県が概算金をすぐ示せず、農家がいくらで売れるか分からないまま刈り取りを進めるケースも報じられました。白井さんによると、前年は複数の買い手がトラックで訪れたのに対し、今年は収穫初日に1社も来なかった、との話もあります。

JA福井県五連の宮田幸一会長は、コメが余っている状況で価格を決めにくいとし、ギリギリまで待って決める必要がある、との趣旨を述べていました。価格決定の遅れ自体が、現場の不安を増幅させています。

政府への不信と政策の板挟み

農家からは、高市首相への不満や、「政府には何の期待もできない」との声も出ています。背景には、米価下落を抑えるため業界や自治体側が求めた備蓄米の早期買い戻しが、すぐに進まなかったことがある、との見方があります。

官邸側は物価高対策を優先し、消費者向けの値下がりを重視している、との分析も報じられています。安く買いたい家計と、採算が取れる価格を求める農家——その板挟みが、いまのコメ政策の難しさです。

家計への影響と、先にあるリスク

短期的には、米価下落は家計の食費負担を和らげる材料です。ただし、赤字が続けば離農が進み、耕作放棄や産地の縮小につながり得ます。一度失われた生産基盤は、すぐには戻りません。

「安くなるのは歓迎」と「将来も安定して食べられるか」は、別の時間軸の問題です。いまの値下がりを、単なる追い風だけで片付けない視点が必要です。

これから見るポイント

(1)各地の概算金の水準と決定時期
(2)備蓄米買い戻しなど政府対応の有無
(3)店頭価格がどこまで下がるか
(4)離農・作付け縮小の広がり

なお、本稿の価格・在庫は報道時点の数値です。地域や品種で差があります。

まとめ

2026年産のコメは、在庫過多を背景に買い取り価格と店頭価格の下落が進み、肥料高騰と重なって農家の赤字懸念が強まっています。News.comは、消費者物価と生産現場の両方から続報を追います。