Apple製品の値上げが止まりません。

MacやiPadだけでなく、今後はiPhoneにも価格上昇の波が押し寄せる可能性があります。その背景には、世界的なメモリ不足と、AIブームによる半導体需要の急増があります。

そして今、Appleは中国のDRAMメーカー「CXMT(ChangXin Memory Technologies)」との関係を深めようとしています。しかし、その動きに対し米国唯一の大手メモリメーカーMicron(マイクロン)が強く反発。Appleが期待した「価格競争」を作るシナリオは、思うようには進まないかもしれません。

今回は、iPhoneが高くなり続ける理由を分かりやすく解説します。

Appleを苦しめる「メモリ価格」の急騰

近年、スマートフォンやPC向けメモリ市場は比較的安定していました。

しかし2026年に入り状況は一変します。

最大の理由はAIです。

ChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、AIサーバーでは大量のDRAMやHBM(高帯域幅メモリ)が必要になりました。

半導体メーカーは利益率の高いAI向けメモリの生産を優先した結果、スマートフォン向けDRAMの供給量が減少。需要と供給のバランスが崩れ、価格が急騰しています。

Appleもこの影響を大きく受け、MacやiPadなどの価格改定を余儀なくされました。

「買いたたきのApple」が通用しなくなった

Appleといえば、巨大な販売台数を武器に部品メーカーとの価格交渉で圧倒的な強さを誇る企業です。

これまでは、Samsung・SK hynix・Micronといった大手メーカーに対しても価格交渉を有利に進められていました。

ところが現在は状況が逆転しています。

AI市場の拡大によって、メモリメーカー側が「Apple向けよりAI企業向けに売った方が利益が出る」という立場になったからです。

つまり、Appleは以前ほど価格交渉力を持てなくなっています

Appleが中国CXMTに接近する理由

そこでAppleが目を付けたのが、中国最大級のDRAMメーカー「CXMT」です。

Appleは現在、CXMTYMTCといった中国メーカーからメモリを調達する方向で検討を進めており、すでに評価試験も始めています。

Appleにとって最大の狙いは、「第4のメモリメーカー」を育てることです。

Samsung、SK hynix、Micronの3社だけでは価格競争が起きにくくなっています。

そこへCXMTが本格参入すれば、「価格を下げなければCXMTへ発注する」という交渉カードになります。

Appleらしい戦略と言えるでしょう。

Micronのけん制は思ったほど効果がない?

当然、この動きを最も嫌がる企業があります。

米国唯一の大手DRAMメーカーであるMicronです。

Micronは米政府に対し、中国企業への規制強化AppleによるCXMT採用への反対などを働きかけています。

しかし状況はMicronにとって楽観できません。

理由は単純です。Apple自身が「価格を下げたい」という強い動機を持っているためです。

現在のメモリ価格はAppleの利益率を圧迫しており、このままでは製品価格の上昇が避けられません。

Appleとしては、新しい調達先を確保するメリットの方が大きくなっています

それでも値下げにはつながらない可能性

仮にAppleがCXMT製メモリを採用したとしても、「iPhoneが安くなる」とは限りません

その理由は3つあります。

① AI需要は今後も増え続ける

生成AI市場は拡大を続けています。AIデータセンター向けメモリ需要も増え続けると予想されており、供給不足は簡単には解消されません

② Appleも利益を確保したい

Appleは利益率を重視する企業です。仮に部品価格が下がっても、その分をすぐ販売価格へ反映するとは考えにくいでしょう。価格維持によって利益改善を優先する可能性があります。

③ 新機能でコストはさらに増える

今後のiPhoneでは、Apple Intelligence、オンデバイスAI、より大容量メモリ、高性能カメラなどが求められます。これらはすべて部品コスト増加につながります。

つまり、仮にメモリ価格だけが下がっても、全体としては値下げ要因になりにくいのです。

中国メーカーは「安いメーカー」ではなくなっている

以前は、「中国メーカー=価格が安い」というイメージがありました。

しかし現在のCXMTは状況が違います。

世界シェアを急拡大し、AI需要を背景に価格決定力を持ち始めています

むしろ一部では韓国メーカー以上の価格設定を行うケースも報告されており、Appleが期待するほど大幅なコスト削減につながる保証はありません。

まとめ

Appleが中国CXMTへ接近している背景には、世界的なメモリ不足があります。

AIブームによってメモリ価格は高騰し、これまで強い交渉力を持っていたAppleでさえ価格上昇を抑えられなくなっています。

CXMTを新たな調達先として育てることで価格競争を起こそうとしていますが、Micronの反発や米中対立、さらにAI需要そのものの拡大を考えると、状況がすぐ改善するとは言えません。

結論としては、iPhoneの高価格化は今後もしばらく続く可能性が高いでしょう。

AI時代はソフトウェアだけでなく、その裏側を支える半導体市場そのものが製品価格を左右する時代へと変わり始めています。