立憲民主党の男性党員が、生成AIでつくった架空の女性を、実在の政治活動家であるかのように発信していた問題で、本人が取材に対し「非常に軽率だった」と反省を示しました。アカウントでは性暴力被害や妊娠・出産を「自分の経験」として語っており、ネット上で強い批判が広がっています。
ジャーナリストの堀潤氏が2026年8月19日、男性からの書面回答を報じました。News.comは、何が起きたのか、なぜ問題なのか、政党側の対応を整理します。性暴力の具体的な描写は避け、事実関係と論点に絞ります。
何が起きていたのか
X(旧Twitter)上には、「中村りほ@立憲民主党」などと名乗るアカウントがありました。プロフィールには、性暴力から妊娠・出産に至った経験を生かし、女性が安心して暮らせる社会を目指す、といった趣旨が書かれ、女性支援や子育て、農業、地域活性化、福祉などを掲げていました。プロフィール写真や投稿写真に写っていた人物は、生成AIでつくられた架空の顔でした。
投稿は抽象的な主張にとどまりません。出産の日時や体重を挙げた報告、産後の政治活動、実在の地名での訪問など、実在する一人の人生として読める内容が続いていました。男性本人の名義の別アカウントでは、「中村りほ氏」が選挙挑戦を決めた、後援会を移行する、といった紹介も行われていた、と報じられています。
一方で、人物が架空であることや、画像がAI生成であることは、受け手がすぐ分かる形では示されていませんでした。党の公認候補でもありませんでした。
本人の説明と反省
堀潤氏の取材に、男性は8月19日に書面で答えました。女性や子育て、性暴力被害などの問題を発信したい思いがあり、架空の人物を設定した、と説明しています。そのうえで、「実在する人物であるかのような見せ方となり、見る方に誤解を与える発信になってしまった。今振り返れば、非常に軽率だった」と述べました。
党名を付けた理由については、自身が立憲民主党の党員で、党の政策に共感していたからだと説明しました。同時に、架空人物のアカウントに党名を付けると、実在の党関係者だと誤解されると認め、「党や関係者にも迷惑をかける行為だった」としています。
性暴力被害を設定に入れた点についても、支援政策を発信したい問題意識があったとしつつ、「目的があったとしても、架空の人物を実在の政治活動家のように見せる方法が正当化されるわけではない」と認めました。AIを使うなら生成物だと明示することが不可欠だった、今後は同様の方法では発信しない、とも述べています。
なぜ深刻なのか
問題の核は、技術そのものより偽りの当事者性です。性暴力被害や出産は、実在する人が危険や葛藤を抱えながら語る経験です。存在しない人物の「実体験」として政治的共感を集めれば、本物の当事者の声との境界が曖昧になります。支援を掲げていても、借り物の一人称で支持を得ようとする手法は、被害者支援の文脈では特に傷つきやすい行為です。
加えて、政党名を掲げたことは組織の信用問題です。党名付きアカウントを見た人は、公認や推薦、少なくとも党が把握する人物だと受け取りかねません。実際の地方議員や候補予定者、被害当事者として活動する人にも、余波が及び得ます。生成AIで顔だけでなく経歴・家族・被害経験・政治活動まで作れる時代に、透明性をどう守るかが問われています。
党側の対応
堀潤氏が8月18日に取材した立憲民主党栃木県連によると、作成者は実際に同党の党員の男性でした。ただし公認を得て活動していたわけではありません。党本部も把握し、アカウント名などに「立憲民主党」と書かないよう連絡した、と説明されています。AIで人物画像をつくり政治発信に使う行為も不適切だと伝え、対応を求めているとのことです。
男性は現在、問題のアカウントにログインできない状態だと説明し、原因は把握できておらずXのサポートに問い合わせている、としています。アクセスが戻った場合は、人物が架空だったこと、過去の投稿が事実ではなかったことを、閲覧者に明確に伝える対応が必要になります。
政治的な意見を発信する自由は、党員にも有権者にもあります。女性支援や性暴力被害者支援を訴えること自体も、重要なテーマです。だからこそ、土台にある人物や体験が実在するのかを偽ってはなりません。生成AIの利用そのものが禁じられるわけではありませんが、選挙や政党名が絡む発信では、少なくとも「架空である」「AI生成である」「公認ではない」が一目で分かる表示が必要です。表示があれば何を語ってもよい、という話でもありません。内容の倫理性は、ラベルとは別に問われます。
まとめ
男性党員は、AIで架空女性をつくり性暴力被害や出産を語らせた発信について、「非常に軽率だった」と認めました。目的が政策発信であっても、偽りの当事者性と党名の使用は正当化されません。News.comは、政党の再発防止と、政治発信におけるAI明示のルール作りを続報します。
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