東京都は10月28日、性自認と性的指向について学ぶ企業等の職員向けオンライン研修を発表しました。収録済みの約60分の動画を、11月4日午前9時から12月17日午後11時59分まで限定公開で配信します。視聴は無料ですが事前申込が必要で、都内に住所を有するか、都内で活動する企業等の職員が対象です。
研修のテーマは、多様な性の理解を通じてダイバーシティの推進を考える内容です。講師は認定NPO法人ReBitの藥師実芳代表理事です。企業の主体的な取組を促すための学習機会であり、この発表によって新しい罰則や一律の社内制度が決まったというものではありません。研修への参加と、各職場での具体的な運用改善を分けて考える必要があります。
申込期限と視聴期限は別
申込は10月28日午後2時から始まっており、12月17日午後5時までの案内です。同じ17日でも、動画の配信終了は午後11時59分で、申込の締切より後になります。配信最終日の夜に申し込めばよいと受け止めないようにしたいところです。申し込んだ後、視聴案内を受け取る流れも公式の資料で確認する必要があります。
収録動画の限定公開という方式には、決まった開催時刻に全員を集めにくい職場でも受講を計画しやすい面があります。一方、配信期間が長いからといって、誰でも手続きなしに視聴できるわけではありません。対象条件と事前申込を確かめ、担当者が社内で案内する際は、公式の申込先へつながる情報を添えることが大切です。
企業が複数人での受講を考える場合は、申込単位や視聴情報の共有の扱いを確認したいところです。一人が申し込めばどこまで社内で共有できるかは、今回の記事で独自に決められる事項ではありません。録画を保存したり別の場所へ再掲載したりすることも、無料であることだけを理由に可能だと考えないようにする必要があります。
都は今後、第2回を12月、第3回を来年1月に配信開始する予定で、毎回テーマを変えるとしています。ただし、後続回の具体的な内容や申込方法まで今回の発表で確定しているわけではありません。第1回の申込でその後のすべての回も登録されると推測せず、各回の正式な案内を確認する必要があります。
用語の理解を日常の対応につなげる
性自認と性的指向は、同じ意味の言葉ではありません。言葉の区別を学ぶことは、相手の経験を一つの型へ押し込めずに理解する土台になります。しかし、用語を覚えることだけで職場の課題がなくなるとは限りません。日々の会話や書類、相談対応などで、本人が困っている点をどう扱うかという具体的な場面と結びつけることが必要です。
例えば、家族について話すとき、全員が同じ形の家族や交際関係を持つことを前提にすると、話しにくい人がいる可能性があります。業務に必要な確認と私生活への詮索を分けることは、多様な人が働く職場全体に関わります。これは今回の研修内容を先取りして断定するものではなく、受講後に社内のやり取りを振り返るための視点です。
相談があったときには、本人が何を困りごととして伝えているかを聞くことが重要です。周囲が属性を推測し、本人が望んでいない説明や対応を始めると、安心して相談できなくなるおそれがあります。何を、誰に、どこまで共有してよいかを確認する姿勢は、研修の受講歴とは別に、実際の業務で必要になります。
本人の同意なく性自認や性的指向に関する情報を周囲へ伝えることは、深い不安や不利益につながる可能性があります。支援するつもりで上司や同僚へ知らせる場合も、意図だけで正当化することはできません。社内で誰が相談を受け、情報をどう管理するかを検討することは、企業が理解を行動へ移すための重要な論点です。
人事制度は書類と運用を一緒に見る
社内制度を見直す場合、就業規則や申請書の文言だけを変えても、担当者の対応が追いつかなければ利用しにくさが残る場合があります。制度の対象や必要書類、問い合わせ先が分かりやすいかを確認することが大切です。ただし、今回の発表から、特定の福利厚生が全企業に義務づけられたと読むことはできません。
採用の現場では、仕事に必要な能力や経験についての確認と、応募者の私生活に関する質問を整理する必要があります。研修を受ける機会に、面接で普段使う質問が業務上の目的に合っているかを点検することが考えられます。個別の質問の法的評価は事情によって異なり、この記事では一律の適法・違法の判断を示しません。
制服や施設の利用などの課題も、本人の希望と現場の条件を具体的に話す必要があります。すべての人に同じ対応を当てはめればよいとは限りません。本人に説明を繰り返させる負担を減らすこと、相談したこと自体が周囲へ伝わらないようにすることなど、利用までの過程にも目を向けたいところです。
顧客対応を担う部署では、従業員向けの理解がサービスの案内にも関わる場合があります。申込書の選択肢や呼び方、家族を確認する表現など、慣習として続いている項目を見直す余地があります。必要な情報の目的を確認し、本人が答えにくい項目を無条件に増やさない姿勢は、利用者の多様性を考えるうえでも重要です。
受講の機会を確保する現場の工夫
視聴が無料でも、業務の中で約60分を確保することには調整が必要です。交代制の職場や接客の現場では、全員が一度に離席することは難しい場合があります。担当者は、配信期間の中で受講できる時間を分散するなど、通常業務との両立を考える必要があります。無料という言葉だけで運用上の負担がなくなるわけではありません。
受講を個人の自主学習だけに任せるか、社内の研修として扱うかも、企業ごとの判断になります。受講時間の取扱いは所属先の規程や実施方法を確認する必要があります。今回の公表は学習機会の案内であり、各企業の労務上の取扱いを一律に決めたものではありません。
小さな事業所では、人事の専任担当者がいない場合もあります。そうした現場でも、まず相談の窓口や情報の共有範囲を整理するなど、できるところから検討することが考えられます。大規模企業と同じ仕組みをそのまま導入することより、本人が困ったときに誰へ連絡できるかを明確にすることが、実務上の入口になります。
家計や働き方との関係では、安心して相談できることが就業の継続に関わる可能性があります。ただし、今回の研修によって離職率が何%下がるなどの効果は確認されていません。学びの機会を設けたことと、その後の職場環境の変化は別に見る必要があります。採用や定着の効果を数字で語るには、実績と調査の条件が必要です。
受講後の振り返りで気をつけたいこと
研修の感想を共有する際、参加者自身の性自認や性的指向を話すよう求める必要はありません。学ぶ場が、個人の情報を明かさなければならない場になると、かえって参加しづらくなる場合があります。教材の内容と業務の改善点を話し合うことに焦点を置き、誰が当事者かを探すような進め方を避けることが大切です。
アンケートを行う場合にも、収集する情報の目的と共有範囲を検討したいところです。理解度の確認に不要な個人情報まで尋ねることは、研修の目的と合わない可能性があります。本人の経験談がなくても、相談経路や書類の改善を考えることはできます。組織の取組を進めるために、個人へ説明責任を背負わせない姿勢が重要です。
今後は、申込・視聴の案内の変更、後続回の内容、企業向けに追加される資料を確認します。実施後の利用状況が公表された場合には、申込数と視聴数、職場での改善事例などを区別して伝える必要があります。現時点で受講者数や改善効果は未確認であり、予定される配信の成果を先に断定することはできません。
受講後に社内の取組を紹介するときには、従業員の個人的な経験を広報の材料として求めないことも大切です。本人が断りにくい関係では、同意したように見えても負担を感じる場合があります。組織として変えた制度や相談の仕組みを説明することと、誰かの私生活を紹介することは、別の判断として扱う必要があります。
管理職と担当者だけで情報を共有しても、日常の会話に関わる人へ基本的な考え方が伝わらなければ、相談のしにくさが残ることがあります。誰がどの内容を理解する必要があるかを整理し、業務に合った形で説明を続けることが重要です。一度の動画視聴を完了したかだけで、理解の浸透を判断しない視点が求められます。
制度を見直した後は、使う人が迷わず窓口へ届くかを確認することも役立ちます。申請書の置き場所や問い合わせ方法など、小さな点が利用のしやすさを左右します。相談件数が少ないことだけで課題がないと判断せず、声を上げやすい環境かを考えることが大切です。
写真はテーマに関連するイメージです。発表対象の建物・店舗・参加者そのものを写した写真ではありません。
出典は東京都総務局の10月28日発表です。視聴方法や申込の取扱いは公式ページとチラシで確認してください。本文の人事・現場運営に関する説明は編集部の確認の視点で、研修で必ず扱われる内容や新たな法的義務を示したものではありません。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/ja/information/press/2026/10/2026102815
まとめ
性自認と性的指向を学ぶ無料オンライン研修は、11月4日から12月17日まで配信予定で、事前申込が必要です。受講を入口に、本人の意向と情報の共有範囲を尊重し、相談や制度の運用を具体的に点検することが大切です。
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