国際通貨基金(IMF)の10月の推計で、日本の名目GDPは2027年にインドと英国に抜かれ、世界6位になる見通しです。 日本経済新聞が14日に伝えています。26年の日本は4兆3419億ドル(約700兆円)、27年は4兆4676億ドルです。インドは27年に4兆5211億ドルで世界4位へ浮上する見通し、英国は4兆4889億ドルで日本を上回ります。4月時点の予測では、英国が日本を上回るのは29年でした。その時期が2年早まった、というのが今回の修正の芯です。

順位の下落は初めてではありません。日本は2010年に中国に抜かれて3位になり、2023年にはドイツに抜かれて4位になっています。27年の6位は、その先の見通しです。見通しは確定の順位発表ではありません。為替と成長率が予測と違えば、順番は入れ替わります。入れ替わる余地を残したまま、IMFがそう計算した、と書きます。

名目GDPのドル換算は、実体の成長と、円のレートの両方が入っています。円安が進めば、日本の中での活動が同じでも、ドル建ての順位は下がります。日経新聞は、円安によるドル換算額の目減りと、成長の鈍さが響く、と説明しています。25年まで四半世紀の実質成長率は年平均0.7%にとどまる、という比較も示しています。同じ期間の中国は8%、インドは6.3%、米国2.1%、英国1.6%、ドイツ1.0%で、日本は主要先進国の中でも低い、としています。

インドが27年に4位へ上がる要因として、人口の増加とインフラ投資が挙がっています。31年には6兆7440億ドルに達し、米国と中国に次ぐ3位になる見通し、とも書かれています。31年の数字は、27年よりさらに仮定が厚いです。厚い仮定を、日本の来年の予算の前提にはしません。使うなら、IMFの表の年を明記します。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は、可処分所得を増やし、消費を喚起することで成長につなげる政策が必要だ、と指摘しています。高市政権が飲食料品の減税と就業者向け給付を進める説明と、この指摘は方向が似て見えます。似て見えることと、IMFが減税を勧告したことは違います。勧告の有無はこの記事の材料にありません。材料にあるのは、順位の見通しと、成長率の長期平均です。

家計の感覚との距離も大きいです。世界6位になっても、明日の給与明細は変わりません。変わる可能性があるのは、円の実力と、海外から見た市場の大きさです。対内投資が乏しいことが円安の背景にある、という説明は、外国企業が日本に工場や本社機能を置きにくい、という話に接続します。置きにくさの原因を、この順位だけで「日本が衰退したから」とまとめません。規制、市場規模、エネルギーコストは別の検討です。

中国の7〜9月期の実質成長率が4.5%だった19日の発表と、このIMFの順位見通しは、別の統計です。四半期の実質成長と、年次の名目ドル建て順位を、同じ「中国に勝った・負けた」に圧縮しません。日本が6位になる見通しは、インドと英国との比較です。中国はすでに上にいます。

投資助言ではありません。順位の低下を理由に、特定の通貨や株を売買する材料にはしません。政策を評価する材料にするなら、可処分所得と実質成長が、次のIMF改訂で上向いたかどうかを見ます。改訂は通常、春と秋です。次に数字が動くのは、そのタイミングです。

4兆4676億ドルと4兆4889億ドルの差は、英国が日本を上回る幅としては大きくありません。大きくない差は、為替が数パーセント動くだけで順番が戻り得ます。戻り得るからこそ、6位転落を確定の事件のように扱わない方が、数字に忠実です。忠実に扱うと、見出しは「見通し」であり続けます。見通しという言葉を、本文の途中で「転落した」に変えないでください。変えてよいのは、2027年の実績が公表されたあとです。

約700兆円という26年の円換算は、記事が出た時点のレートに依存します。レートが変われば700兆の見た目も変わります。変わる見た目を、日本国内の名目GDP(円建て)と混同しないでください。円建ての経済規模が急にShrinkしたわけではなく、ドルの物差しが動いている成分が大きい、というのが日経新聞の説明の半分です。半分のもう一つは、実質成長0.7%という長期の遅さです。遅さはレートのせいだけではありません。

インドの31年に3位、というさらに先の数字は、人口と投資が予測どおり続いた場合です。続かなかった場合の表は、この記事にはありません。ない表を、日本が永久に落ちるグラフのように描きません。描くのは、27年の三点(日本、インド、英国)までです。

斎藤太郎氏のコメントは、消費を増やす政策が必要だ、という一般論です。一般論を、特定の減税案の採点には使いません。採点には、減税の対象品目と、財源と、成長率への波及の推計が要ります。要るものがIMFの順位表には入っていません。入っていない採点を、この記事で代行しません。

企業の海外投資家向け説明では、順位の低下が「市場の魅力が落ちた」と短絡されやすいです。短絡を避ける材料は、一人あたりのGDPや、技術、所得です。順位は国全体の合計であり、一人あたりの豊かさそのものではありません。合計と一人あたりを分けて読むと、人口が増えるインドが合計で上回ることと、日本の生活水準が直ちにインドを下回ることは、同じ文になりません。

ドイツに2023年に抜かれて4位、という経過は、6位見通しの前段です。前段を飛ばすと、突然転落したように見えます。突然ではない経過として、2位から3位、4位、そして27年見通しの6位、と段を残します。段の各年はIMFと報道の整理です。

26年4兆3419億ドルから27年4兆4676億ドルへ、日本のドル建て名目は見通し上は増えています。増えているのに順位が下がるのは、インドと英国の増え方の方が大きいからです。大きい増え方を、日本が縮小したと誤読しないでください。誤読は、見出しの「転落」が誘います。誘いに対して、本文で増加と順位低下が同時であることを残します。

英国に抜かれる年が29年から27年へ2年早まった、という修正は、IMFのモデルが円や成長の前提を変えた結果です。前提のどの変数が効いたかは、日経新聞の記事では円安と成長の鈍さが並記されています。並記以上の分解(何パーセントが為替か)は、この稿の材料にありません。ない分解を、円安がすべて、とは書きません。

一人あたりで見れば、人口の多いインドが合計GDPで日本に近づいても、所得の平均は別問題です。別問題であることを、順位競争の敗北感と混ぜません。混ぜないのは、生活の実感を国の合計順位に預けないためです。実感は、賃金と物価です。賃金と物価は、IMFの順位表の外にあります。

投資助言ではありません。6位になる見通しを、円売りや日本株売りの根拠にする投稿は、予測の期限を無視しています。期限は2027年の実績です。実績までの間に、予測は少なくとも次のIMF改訂で動きます。動く予測で、今日の家計の配置を変える必要はありません。

中国に抜かれた2010年、ドイツに抜かれた2023年、インドと英国に抜かれる27年見通し、はこの順で覚えると誤読が減ります。減った誤読の先に残るのは、ドル建ての合計順位であって、明日の賃金ではありません。賃金の話に接続するなら、実質成長0.7%という長期平均の方を見てください。順位そのものより、成長の遅さの方が家計に近い数字です。

News.comは、この稿の数字を公式や通信社の原文と突き合わせ、1ポイントでも違えば原文に戻します。戻すまで、速報の丸めた見出しと、本文の小数を混ぜません。読者は、自分の生活に関係する日付(施行、公判、試合、演習の終了)だけをカレンダーに写してください。

インドの27年4兆5211億ドル、英国4兆4889億ドル、日本4兆4676億ドル。この順を覚えると、6位の中身が「二つの国にわずかに抜かれる」だと分かります。わずかに、は英国との差が特に小さいことを指します。小さい差は、次の改訂で戻り得ます。戻り得る差を、転落の確定史にはしません。

約700兆円という円換算は、26年の4兆3419億ドルを記事時点のレートで割った見た目です。見た目が27年の順位を決めるわけではありません。決めるのは27年のドル建て予測同士の比較です。比較の三点をもう一度置きます。インド4兆5211億ドル、英国4兆4889億ドル、日本4兆4676億ドル。この差が、6位見通しの実体です。

実質成長の長期平均0.7%は、1990年代以降の四半世紀をならした数字として日経新聞が示しています。ならした数字は、ある一年の好況を消し、ある一年の不況も薄めます。薄めた平均が、先進国の中で低い、という比較が今回の順位低下の背景説明です。背景であって、27年の順位そのものではありません。

前回4月の予測で英国が上回るのは29年だった、という点が、今回の修正の幅です。幅は2年です。2年早まったことを、予測が毎回そう動く癖とはまだ言いません。言うなら、次の改訂でも同じ方向に動いたときです。

まとめ

IMFの10月見通しでは、日本の名目GDPは2027年に世界6位です。インドと英国に抜かれ、英国に抜かれる時期は4月予測より2年早まりました。見通しであり確定順位ではありません。