環境省は、保護地域以外で生物多様性の保全に役立つ地域「OECM」をアジアで広げるための新しいロードマップが公表されたと発表しています。対象期間は2026〜2030年です。10月26日午前に確認した22日付発表では、候補地を認定するだけでなく、その後の監視や改善、長期的な維持までを一連の取組として捉える方向が示されています。

ロードマップは、アジア保護地域パートナーシップの枠組みでまとめられ、19日に公表されました。7月に東京都内で開いたワークショップの議論などを踏まえています。会合にはアジア12か国の政府関係者、国際機関や研究機関などから42人が参加しました。今回の発表は、その成果と協力の方向性を知らせるものです。

OECMは、国立公園などの保護地域以外で、生物多様性の保全に貢献する地域を指す考え方です。身近な緑を見つけたら自動的に該当するという意味ではありません。どんな自然があり、誰が管理し、保全にどのような効果があるかを確かめる過程が重要になります。

面積を増やすことと、保全の質を保つことをつなぎます

国際的には、2030年までの保全目標である30by30の達成に向け、保護地域とともにOECMの推進が位置付けられています。ただし、面積の数字だけを追うと、その場所で何が守られているかが見えにくくなります。長く管理できる体制や、変化を調べる方法を一緒に考える必要があります。

新しいロードマップは、候補地の特定、評価、認定、報告、モニタリング、改善、長期維持という過程を整理しています。入口の認定で取組が完了するという発想ではありません。管理の実績を確認し、必要な修正を続ける仕組みまで考えることが、今回の内容を暮らしや地域活動へ引き付けて読む際の焦点です。

発表では、制度の基盤、候補地の拡大、長期的な質と効果、協働による管理という四つの柱が示されました。ここでいう協働は、行政だけで仕事を完結させないという視点を含みます。地域の住民、企業、研究機関、団体などが、それぞれの知識や役割を持ち寄ることが求められます。

一方、アジア各国は法制度や社会、生態系の条件が違います。ワークショップでは、単一の方法を当てはめず、それぞれの状況に応じた実施が重要だという認識を共有しています。海外の事例を紹介する場合も、日本の土地にそのまま同じ権利や義務が生じると説明することはできません。

地域の土地利用では、管理者と目的を確かめます

地域の緑地で保全活動を進めたい場合、最初に必要なのは、土地を誰が所有し誰が管理しているかを確かめることです。自然に詳しい人がいることと、作業の許可を得ていることは別です。候補地として紹介する前に、関係者の役割と、どの範囲について話しているかをそろえる必要があります。

保全の目的も、樹木を増やすことだけとは限りません。場所によっては、草地や水辺を維持することが重要になる場合があります。ここでは特定の管理方法を勧めているのではなく、見た目の緑の多さだけでは判断できないという点が大切です。対象の生き物や環境に応じた知識が必要になります。

住民の利用がある場所では、自然を守ることと、散歩や通学などの日常利用をどう調整するかも課題です。保全という言葉だけで立ち入り禁止になると決めつけず、実際の管理方針を確認します。反対に、普段利用できるからといって、採取や植栽を自由に行ってよいとは限りません。

管理を続けるには、作業の日程だけでなく、参加できない人へ情報を伝える方法も必要です。会合に出席する人だけで方針を決めると、近隣の利用者が変更を知らないままになるおそれがあります。地域の掲示や管理者の説明など、日常の利用とつながる形で共有できるかが実務上の確認点になります。

企業の参加では、活動の成果と広告表現を分けます

企業が緑地を管理したり地域の活動を支援したりする場合には、費用や人員の継続性が問われます。単発の行事として参加することと、長期の保全を担うことでは必要な約束が異なります。担当部署や予算が変わっても続けられる体制があるかを確認することが、協力先にとっても重要です。

対外的な説明では、参加した事実、管理した面積、生物の変化を混ぜないことが必要です。社員が活動したから生物多様性が改善したと直ちに結論付けることはできません。成果を伝えるなら、何をいつから測り、どの比較によって評価したかを示す必要があります。写真の印象だけで効果を確定しない姿勢が求められます。

今回のロードマップ公表は、個別企業の商品やサービスに環境上の保証を与える発表ではありません。また、特定の土地が新たに認定されたという一覧でもありません。広告や営業資料で引用する場合には、国際協力の方向性を示す資料であることと、自社の取組の評価が別であることを明確にする必要があります。

住民や消費者も、環境配慮の表示を見る際に、どの地域で何をしているのかを確認できます。活動費の一部を支援しているのか、管理を直接担うのかでは関わり方が違います。すべての説明に専門的な数値が必要なわけではありませんが、確かめられる実績と将来の目標が分かれているかは重要な判断材料です。

調査を続ける仕組みは、地域の負担にも目を向けます

自然の状態を長く追うには、観察した日付、場所、方法を残しておく必要があります。担当者が変わった途端に記録が読めなくなると、以前との比較が難しくなります。専門機関に依頼する作業と、地域の参加者が継続できる記録を整理することで、無理のない体制を考えやすくなります。

ただし、記録を公開することがいつも望ましいとは限りません。希少な生き物の詳しい場所など、公開範囲に配慮が必要な情報もあります。透明性を高めることと、現地への不用意な訪問や採取を招かないことを両立させる必要があります。データを誰が持ち、誰に渡すかも管理の一部です。

ボランティアに作業が集中すると、参加者の高齢化や生活の変化で継続が難しくなる可能性があります。参加者が減ったときにどう支えるか、作業の負担をどう分担するかを話し合うことが、長期維持の現実的な論点です。認定や表彰の有無だけでは、この課題は解決しません。

地域の学校が学習に関わる場合には、観察会の教育目的と、管理作業の責任を区別します。子どもたちの参加が継続的な保全人員として当然視されるべきではありません。安全や引率の条件を含め、教育活動として無理なく関われる範囲を管理者と相談することが必要です。

新しい計画から直ちに生じる義務は確認されていません

今回の環境省発表は、国際的なロードマップの紹介です。国内の土地所有者に一律の新規負担を課す、家庭から新しい料金を徴収するといった制度変更を示したものではありません。地域の土地利用への直接の影響は、国内の制度や個別の認定・管理方針について別途確認する必要があります。

続報では、ロードマップを受けて各国がどんな制度や支援策を具体化するか、長期管理の評価をどう進めるかを見ます。国内で新たな募集や認定の案内が出れば、対象、必要な書類、管理の条件を確認して記事を更新できます。現時点で公表されていない採択数や予算額は、未確認です。

保全の効果は、ある年の認定数だけでは捉えきれません。数年後に管理が続き、当初の目的に沿って環境が保たれているかという視点が必要です。住民にとっても、認定の名称を覚えることより、自分が利用する場所の管理者と相談先が分かる方が、日常の行動につながりやすくなります。

今回の協力方針をきっかけに、地域の活動が外部の知識や人材とつながる可能性があります。その際にも、地域の合意や負担を飛ばして進めないことが大切です。活動の規模を広げる前に、目的、役割、記録、見直しの方法を共有することが、長期の保全へつながる土台になります。

観察の結果を比べる際には、季節や調べ方が同じかを確認します。異なる時期に見つかった生き物の数をそのまま比べても、管理の効果とは言えない場合があります。活動を始める前の状態を残しておくことは、その後に何が変わったかを考える基礎になります。成果を急いで示すより、比較できる記録を積み重ねる視点が必要です。

土地の所有者が変わる場合や、管理を委託している契約が終わる場合に、保全の方針をどう引き継ぐかも論点です。長期維持という目標には、担当者の熱意だけでなく、役割を引き継げる記録や合意が関わります。名称を付けた時点の体制と、数年後も続く体制を同じものとして考えないことが大切です。

住民が意見を出す窓口も、管理の質を支える材料になります。利用者が環境の変化に気付いても、どこへ伝えればよいか分からなければ、改善につながりにくくなります。地域の声を受け取る方法と、寄せられた情報を専門的に確かめる方法をつなぐことで、日常の利用と保全の目的を両立させやすくなります。

確認資料:環境省「APAP OECMロードマップ(2026–2030)の公表について」(10月22日)。https://www.env.go.jp/press/press_05572.html 。写真は森林のイメージで、今回新たに認定された地域を示すものではありません。

まとめ

アジアのOECM推進は、候補地の拡大とともに、監視や改善を続ける段階を重視しています。国内での具体的な制度変更とは区別しながら、地域の合意、管理の担い手、長期の保全効果がどう確保されるかを追う必要があります。