右膝の手術などで3場所連続休場していた横綱・豊昇龍が、2026年11月8日に福岡国際センターで初日を迎える大相撲九州場所に出場します。日本相撲協会が11月6日に初日と2日目の取組を発表し、初日は新小結の美ノ海、2日目は東前頭筆頭の朝乃山との対戦が決まりました。
豊昇龍は7月下旬に右膝を手術し、9月の秋場所を全休しました。復帰に向けて福岡県内で出稽古を重ね、11月4日には朝乃山、豪ノ山と計15番取って13勝2敗を記録しています。横綱として初めての優勝を目指す九州場所は、手術した右膝の状態だけでなく、本来の鋭い立ち合いと攻めを取り戻せるかが焦点になります。
豊昇龍が大相撲九州場所への出場を決断
豊昇龍は11月5日、師匠の立浪親方と話し合ったうえで九州場所への出場を決めました。本人が出場の意思を伝えたとされ、取材には「元気な姿を見せたい」と復帰への思いを語っています。
九州場所の取組編成会議は11月6日に福岡国際センターで開かれました。この時点で十両以上に休場者はなく、豊昇龍も初日の取組に名を連ねました。長期離脱後の横綱が本場所の土俵へ戻ることは、九州場所全体の優勝争いにも大きな影響を与えます。
豊昇龍は2026年5月の夏場所、7月の名古屋場所、9月の秋場所で休場を経験しました。名古屋場所では右膝の状態が悪化し、14日目から途中休場しています。その後、7月下旬に手術へ踏み切り、秋場所は横綱昇進後初めて初日から全休しました。
本場所の土俵に立つのは名古屋場所以来です。休場が3場所続いた一方、実際の取組から離れていた期間も長く、九州場所では勝敗と同時に15日間を戦い抜ける状態まで回復しているかが注目されます。
初日は新小結・美ノ海、2日目は朝乃山と対戦
豊昇龍の初日の相手は新小結の美ノ海です。美ノ海は沖縄県出身で、派手さよりも低い姿勢と粘り強い相撲を持ち味としています。横綱にとって過去の対戦成績では相性の良い相手ですが、復帰初戦には独特の緊張があります。
豊昇龍は投げや足技に加え、相手の動きに素早く反応できる点が強みです。一方で、膝に不安がある状態では、立ち合いで相手の圧力を受け止めた後の踏ん張りや、土俵際で体を残す動きが負担になる可能性があります。美ノ海に低く入られ、長い相撲に持ち込まれた場合、どのように対応するかが初日のポイントです。
2日目には元大関の朝乃山と対戦します。朝乃山は東前頭筆頭まで番付を戻しており、右四つから寄る形に持ち込めば上位力士にとっても脅威となります。
豊昇龍は11月4日の出稽古で朝乃山と7番続けて相撲を取り、6勝1敗でした。本場所直前の稽古で優位な内容を残したことは明るい材料ですが、稽古と本場所では立ち合いの圧力や緊張感が異なります。朝乃山が得意の右四つを狙うのに対し、豊昇龍が正面から受けずに動きの速さを生かせるかが勝負を左右しそうです。
序盤の2日間はいずれも過去の対戦で分が良い相手です。ここで連勝できれば、本場所の感覚を取り戻しながら中盤戦へ進めます。反対に出足が鈍り、相手に先手を取られる展開が続けば、膝の状態を含めて慎重な判断が必要になるでしょう。
右膝手術から復帰までに重ねた実戦稽古
豊昇龍は手術後、すぐに相撲を取る稽古へ戻ったわけではありません。秋場所の全休中は右膝のリハビリを優先し、10月に入ってから徐々に土俵での動きを増やしました。10月5日には約3カ月ぶりに横綱土俵入りを披露し、秋巡業にも途中から合流しています。
九州場所の番付発表後は、立浪部屋だけでなく、境川部屋、追手風部屋、武隈部屋などへ積極的に出稽古しました。11月3日と4日の2日間では計62番を取り、体の動きや右膝の反応を確認しています。
11月4日の武隈部屋での稽古では、朝乃山や豪ノ山を相手に15番取って13勝2敗でした。数字だけを見れば順調な仕上がりです。豊昇龍自身も右膝について「大丈夫」との認識を示し、稽古の感触を確かめながら出場を決断しました。
ただし、15番を取る稽古と15日間続く本場所では条件が違います。本場所では取組だけでなく、土俵入り、支度部屋での準備、連日の移動や治療を含めた体調管理が必要です。初日から数日間の内容が良くても、終盤まで状態を維持できるとは限りません。
復帰場所で最も重要なのは、目先の一番だけに集中しながら、右膝への負担を必要以上に増やさないことです。立ち合いで先手を取り、短い相撲で勝負を決められれば、長期戦による消耗を抑えられます。
横綱として初優勝を目指す場所
豊昇龍は大関時代に優勝を重ね、2025年初場所後に第74代横綱へ昇進しました。しかし、横綱昇進後は途中休場や負傷が重なり、横綱としての優勝にはまだ届いていません。
横綱には大関のような降格制度がありません。その代わり、常に優勝争いへ加わる成績と内容が求められます。休場明けの豊昇龍に対し、いきなり優勝だけを求めるのは厳しい見方でもありますが、本人が出場を決めた以上、横綱として土俵を務められるかは避けて通れない評価軸です。
特に注目されるのが立ち合いです。豊昇龍は相手の動きを見ながら攻め方を変えられる一方、立ち合いで後手に回ると、土俵際まで押し込まれる場面があります。手術後の右膝を守る意味でも、相手の当たりを受けてから反撃するより、自ら踏み込み主導権を握る相撲が理想となります。
もう一つの鍵は、得意とする投げに頼り過ぎないことです。豪快な投げは豊昇龍の魅力ですが、崩れた体勢から強引に技を仕掛けると膝への負担が増えます。前まわしを取って相手の上体を起こす、横に動いて攻めの角度を変えるなど、複数の勝ち方を組み合わせられるかが重要です。
大の里や安青錦との優勝争いにも影響
2026年九州場所の東横綱は大の里、西横綱は豊昇龍です。大の里は秋場所で12勝3敗を記録しており、安定した力強い相撲を続けています。優勝争いでは、前場所11勝4敗の大関・安青錦や琴櫻、霧島らも有力候補です。
豊昇龍が序盤から白星を重ねれば、優勝争いは横綱、大関を中心とした展開になりやすくなります。終盤まで勝ち残った場合は、大の里をはじめとする上位陣との直接対決が大きな見どころになります。
一方、復帰場所では途中休場の可能性も考慮しなければなりません。横綱が無理を重ねて負傷を悪化させれば、次の2027年初場所にも影響します。本人や師匠、医療スタッフが毎日の状態を確認し、長期的な視点で判断することが求められます。
豊昇龍の出場によって、九州場所は東西の横綱がそろう形となりました。大の里が横綱としての存在感を示すのか、豊昇龍が復活を印象づけるのか、それとも大関陣が主役となるのか。年間最後の本場所にふさわしい構図が整っています。
九州場所で問われるのは勝ち星と相撲内容
豊昇龍の九州場所では、単純な勝敗だけでなく、相撲内容の変化も重要になります。立ち合いで鋭く踏み込めているか、右膝をかばうような動きがないか、土俵際で無理な体勢になっていないかが回復状態を測る材料です。
初日の美ノ海戦、2日目の朝乃山戦は、その状態を確認するうえで重要な取組になります。序盤を落ち着いて乗り切り、自分から攻める相撲を続けられれば、横綱として初めての優勝も視野に入ります。
右膝手術と長期休場を経て、豊昇龍は再び本場所の土俵へ戻ります。本人が掲げる「元気な姿」がどのような相撲として表れるのか。11月8日に始まる大相撲九州場所で、復活をかけた15日間が始まります。
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